公共性の高い新聞でそれは認められない。
私はそう思います。
皆さんは重曹をご存知でしょうか?
一般的には、掃除に使用されるイメージがあると思うのですが、弱アルカリ性という性質を利用して、胃酸過多の治療薬として使用されています。
その重曹の投与だけで癌が治ると言われたら、あなたは信じますか?
私は、引用文献と臨床データを反射的に求める(職業病)けれど、一般の方は「へえー」と流すだろうし、患者あるいはその家族は藁にもすがる思いでその「怪しい知見」に注目するだろう。
朝日新聞が、「ガンは真菌だ」というキャッチコピーで、イタリアの詐欺医師トゥリオ・シモンチーニ監修の似非医学書を宣伝している。
https://www.j-cast.com/2019/11/14372661.html?p=all
医師トゥリオ・シモンチーニは、ガンは真菌症であり、重曹を注射することによって治療できると主張していた。
この治療法は「70パーセントの人の命を救っており、副作用も非常に少ない」とも語っていた。
それを信じた患者が重曹療法をしたところ、血液がアルカリ性になって死亡した。
オリヴォットさんの死に関してイタリアの首都ローマで起こされた訴訟で裁判所は、死亡の原因を作り、職権を悪用したことでシモンチーニを有罪と見なし、禁固刑5年6か月を言い渡した。
この医師は、効きもしない重曹療法を「医師」という立場を利用して、あたかも奇跡の治療法のように説明しそれに説得力を持たせた。
患者は、それを信じて、命を落とした。
医師の治療と患者の死は関連がある。
これでも、重曹投与だけで癌が治ると思いますか?
誰も思わないよな。
この話を知っていれば誰も信じないけれど、この話を知らない人はどうだろうか?
うーん。詐欺の片棒を担ぐのも表現の自由?
新聞で嘘をつくのも表現の自由?
嘘を伝えるのがジャーナリズム?
医療行為には命がかかっているんだぞ!
医療行為は1回間違えたら人が死にます。
医療過誤で言い訳したら訴えられます。
とか言って、エビデンスがありましたーってなったら、ワイのプライドがズタボロになるので、調べました。(職業病)
すると、重曹が抗がん剤治療の助けになる可能性についての知見は発見できた。
しかも、かなり権威のあるジャーナルの論文だった。
Acid Suspends the Circadian Clock in Hypoxia through Inhibition of mTOR
日本語版
https://jp.sputniknews.com/science/201806044948650/
細胞の増殖シグナル(mTORC1活性化)のon offはpHにより決まり、通常のpHでは細胞増殖のスイッチがONになるが、酸性ではスイッチがOFFになる。
細胞が酸性になる条件と言うのが、細胞のガス交換ができないことによる二酸化炭素の増加である。
大きくなった腫瘍を構成する細胞は成長過程の腫瘍とは異なり、血管を誘導しないため、腫瘍細胞の近くに血管がなく、酸素と二酸化炭素の交換ができない。
すると、二酸化炭素が貯まり、炭酸イオンとプロトンになって溶けてたまっていく。
プロトン濃度の上昇により、細胞が酸性になり、細胞増殖が止まる。
抗がん剤は増殖スピードの高い細胞をターゲットするので、細胞増殖が止まっている酸性の癌細胞には効果がない。
しかし、食用重曹を腫瘍に届けて、ガン細胞を中和できれば、細胞が通常のpHに戻るので、増殖スピードが上がり、抗がん剤のターゲットになる。
同論文から引用
実際に、水道水を飲ませた癌モデルマウス(tap)と、重曹を添加した水道水を飲ませた癌モデルマウス(bicarb)のmTORC1シグナル活性(mTORC1の下流にあるたんぱく質の活性)を測定したところ、3種類中二種類の癌モデルにおいて、重曹添加群(bicarb)でmTORC1シグナルの有意な上昇がみられている。
同論文から引用
朝日新聞さん。この論文知ってますか?
知っていて誤解釈して、詐欺医師監修の著書を広告にしたんですかね?
似非医学詐欺にひっかからないために、いつもの過去記事で、自衛しよう!