どうも、理系です。
皆さんは「光とともに」という漫画をご存知か?
この漫画は自閉症をテーマにした漫画なのですが、私には綺麗ごとに見えてしまい、最後まで読むことができませんでした。
身内に軽度自閉症患者がいるため、小学校の時に私も発達障害のように扱われた経験があり、正直、口先だけの同情記事を書くつもりはありません。
自閉症が、しつけのせいではなく、病気であることを主張するための記事なので、治療法やセラピーのことが知りたい方や、自閉症患者を身内に持つがそのことを心のどこかで認めたくないと思っている方には結構ショッキングな内容も含まれていると思います。
自閉症とは
今回の記事ではいわゆる広汎性発達障害のことを自閉症と呼んでいます。
コミュニケーションの異常
- ひとりでいることを好む
- 受け身な態度の対人交流
- 一方的すぎる対人交流
- 人情に配慮することに疎い
- 話し言葉が遅れている
- 「おうむ返し」が多い
- 話すときの抑揚が異常である
- 言語による指示を理解できない
- 会話をしていてもかみあわない
- 敬語が不自然である
- 皮肉を言っても通じず、たとえ話がわからない
- 身振りや指差し(体の動き)が理解できない
- 目線、眼差し(目の動き)が理解できない
- 言外の意味が理解できない
- 話の文脈が理解できない
- 特定の物事に対して強い興味をもつ
- 特定の手順を繰り返すことにこだわる
- 常同的な動作を繰り返していく
- 興味をもった領域に関して膨大な知識を持つ
まとめると、具体的でない「察する」「行間を読む」「空気を読む」というのが苦手。
興味が限られた分野に集中し、異常なほどのめりこむ。
あと、健常者にとって「普通に考えたら」の部分の「普通」は通じないから、空気を読むことを求められる社会生活に支障をきたすことが多い。
ただし、症状の程度はかなり個人差があるので、この症状すべてが現れて、日常生活に支障をきたす場合もあれば、ちょっと変わった人程度で済む人もいる。
この「表に出てくる症状が少ない」という点が、発達障害の一番厄介な部分であり、診断が遅れて、理解されず、必要なケアができないという問題の原因になっている。
症状がはっきりしている場合は、両親が言葉の遅れに気づいて、病院に行き、そこで自閉症であると分かるというケースが多いのですが、軽症の場合、症状が見逃されて、病院に行かず、大人になっても違和感を抱えて苦しんでいる人もいる。
表に出ない症状
音や光に敏感だったり、意識の対象が移り変わりやすかったり、という他人から見ると絶対に分からない症状がある。
特に大きな音、強い光、派手な色が苦手で、子供の金切り声や犬の鳴き声、カメラのフラッシュが苦手で、パニックになることがある。
おそらく、この他人から分からない症状を知れば、もはや躾どうこうの問題でないことがお分かりいただけると思う。
脳の異常
少し専門的な話になるので、拒否症状が出る方は飛ばしてくれ。
胎生期に脳が形成されるときに、神経細胞が生まれた後の脳よりも神経細胞同士の結合(シナプス)の数が多く、それが出産までの間に不要な結合が刈り込みされて、シナプスの数が減る。しかし、自閉症患者では、シナプスの刈り込むが不十分である。
小脳の委縮が見られる。(小脳のプルキンエ細胞という抑制性細胞の数が健常者よりも少ない)
他にも、様々な部位(下の写真で黄色くなっている部位)で脳の萎縮が見られる
https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1100100893.pdf
上側頭溝(STS):視線・表情のシフト、口の動きを認識する脳領域
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ninchishinkeikagaku/13/1/13_43/_pdf/-char/ja
紡錘状回(fusiform):顔・表情を認識する脳領域。STSは表情の変化を認識するのに対して紡錘状回は静的な顔を認識(人の顔を覚える)するのに関与する。
前頭前野:認知・記憶・意思決定に関与する脳領域。自閉症に関連させると、他者の行動の意図の理解に関与する脳領域。
上の写真ではAmygdalaの写真もあるが、この部位の異常は必ず見られるわけではない。
いわゆる他人とのコミュニケーションをとるのに重要な表情や視線、行間を読むことに関与する脳領域において異常が見られることがわかる。
感覚をつかさどる脳領域の情報処理速度も健常者と比較して顕著に速い。
恐らく、視覚・聴覚等の感覚過敏はこの神経細胞の情報処理速度の違いによるものではないかと考えられる。(多分、自閉症患者では、神経細胞の刈り込みが不十分なせいで、このような処理速度の違いが生まれているのではないかと俺は思ってる)
また、これらの脳部位における神経細胞の情報処理速度と自閉症(ASD)症状の重症度には相関がみられる。
https://www.riken.jp/press/2019/20190215_1/
このような組織学的異常を見て、もはや躾のせいなんて言う人は皆無だと思う。
ただ、このデータは、自閉症は先天性の脳の異常であり、子育てのやり方によって根本的に改善することはできない(委縮した脳は戻ることはない)という悲しい現実を突き付けてくる。
現時点での治療法は、対症療法で、根本的な治療法は存在しないので、現時点では、一生付き合っていかなければならない。
なお、遺伝的要因については、ゲノムDNA上の共通した異常は発見されているものの、子供に遺伝する確率は明らかになっていない。(少なくとも、メンデルの法則にしたがうほど強力ではない)
不治の病である上に、他人に理解されにくいという苦しい病気である自閉症患者とその家族に、冷たい言葉や視線を投げる第三者が一人でも減って欲しいと思いこの記事を書きました。