理系だもの

コミュ障理系会社員兼バレエダンサーの日記。健康食品のガチすぎるレビューから、ニュースについての自分なりの意見を書いたりしています。ためになる記事も多分ある。理系だもの。好きなこと:バレエ・ダンス鑑賞・音楽を聴くこと(推しは奏音69さん)、嫌いなこと・人:フェミニスト・媚びること・ストレッチ

僕らが平等という理想になれない理由 -情状酌量の神経機構-

どうも、理系です。

今回のテーマの曲はEveさんの新曲「命の食べ方」

最初は恋愛裁判にするつもりだったのですが、ベタ過ぎてやめました。
理想(公平な裁判)を求めているが、理想と現実(犯した罪以外の要素で判決が揺らぐ裁判)の狭間で葛藤するという点で、今回の記事に合いそうだと思い、独断と偏見で選びました。

あと、純粋にEveさん楽曲が好きってのもある。



裁判というものは公平に行われるべきものである。

それが加害者および被害者の人生(命)を平等にとらえるということにつながるからだ。

そんな理想論追いかけても、現実じゃ、危険運転して無罪になる上級国民もいれば、実刑になる人もいて、凄まじく不平等と不満を垂れたくなる。

その反面、でくの坊のニート中年で家族や周囲の人に暴力をふるう息子を殺害した父親には通常より刑を軽くしてくれと願いたくなる。

あぁ、命の重さは平等と前提を立てて、空想で理想を掲げる自分は、いざというときに公平なジャッジができない。

そんな自分が掲げる理想なんて、はるか遠く。脆い。



情状酌量というものは、裁判の公平さに水を差すものなのか、公平な判断に公正さを足すものかという議論はさておき、

今回はNature Communications誌のこの論文を参考に情状酌量ってやつが生まれる脳機構を紹介する。
Neural circuits in the brain that are activated when mitigating criminal sentences
www.nature.com

検討内容

この検討では、実際に日本で起きた殺人事件に基づいた脚本(妻を殺害したなどという内容)に沿った模擬裁判を行った。
それぞれの事件で、裁判員役の被験者には、刑罰を軽減できる事情が示され、この事情には、同情を引き起こすもの(介護疲れと生活苦から殺害に及んだなど)とそうでないもの(不倫相手と結婚するために殺害に及んだなど)が混在している。
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被験者は、懲役20年を基準に、それより重いか軽いかということを決め、自分が感じた同情のレベルを評価した。
そしてfMRIを用いてその時の脳の活動を記録した。

結果

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コチラのfigのグラフにあるように、同情できる状況では刑期が短く判断(減刑)された。
また、その同情できるシナリオでの同情の度合いは、同情できないシナリオよりも高かった(同情できるシナリオ・できないシナリオはちゃんと成立していた)
そして、減刑と同情の間に有意な相関がみられた。

次に、脳の活動の測定結果を紹介する。
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緑の脳部位は犯人に同情したときに活動が上昇する部位。赤が減刑を判断しているときに活動が上昇する脳部位。黄色が緑と赤の重複部位である。

黄色の部位には内側前頭前皮質と楔前(けつぜん)部という部位が含まれている。
これらの部位は、他者理解や道徳的葛藤、認知制御にかかわる領域である。
つまり、情状酌量を行う際の脳では、犯罪に対する不快感と被告人に対する同情が混在するために生じる道徳的葛藤と、量刑判断という認知制御が行われていることが推測される。

また、量刑を下げる度合いと線条体の活動の上昇度合いに相関がみられることも明らかになった(脳の黄色の部分)。この部位は人助けをするときに活動が高まることが知られている。

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ただし、人によっては同情できるシナリオがあったとしてもあまり減刑しない人、ものすごく減刑する人が存在する。
この論文では、このばらつきについても、関与する脳部位を明らかにしている。
島皮質(figの黄色の部分)は身体内部から来る情報と、脳の中で行われる情動・認知処理を結びつける部位です。
この部位の活動が高くなればなるほど情状酌量の度合いが大きくなる。

まとめ

情状酌量は、犯人の犯した罪と同情的背景の道徳的葛藤による「同情」という感情と、「減刑をする」という認知および意思決定により行われる。
ただし、その度合いには個人差があり、その個人差は島皮質という脳部位の活動の差によるものである。

こういう知見を見ると、心って脳にあるなぁ。。。ってしみじみと思う。

理想を空想するのも脳、理想から己を遠ざけるのも脳。