お久しぶりです。理系です。
今回は夕日坂。
人の感情の中で、これが欠ければ、精神疾患になる人が大幅に減るのにと思っていることがあります。
それが、「後悔」です。
自己否定の根幹には必ず、過去の自分に対する後悔があり、後悔がきっかけで自己否定がエスカレートしていくと考えています。
今回は、後悔がどうやって生まれるかを解説していく。
「後悔」を生じさせる脳部位はどこか
眼窩前頭皮質
意志決定や行動制御に関わる外側部前頭前野とつながっており、かつ、感情に重要な扁桃体ともつながっており、かつ、感覚系にもつながっているエリア。しかも、価値の評価や比較に関わることも知られている。
実際に、眼窩前頭皮質に障害のある患者において、後悔を感じないことが明らかになっている。(ギャンブル課題にて、大きな損害を被ったときと大きな利益を得たときの感情の変化に差がないことが示されている)
また、複数のギャンブル課題から、一つを選ぶという課題においては、健常者はそのゲームを選ぶことによる後悔とゲームの期待値で選択を行うのに対して、眼窩前頭皮質に障害のある患者はゲームの期待値のみでゲームの選択を行うことが、解析の結果明らかになっている。
後悔とガッカリは脳科学的にも違う
眼窩前頭皮質に障害のある患者は、落胆を感じることはできる。
なぜなら、落胆に関する脳領域は中側頭回と背側部脳幹であり、障害のある部位とは別だからである。
「後悔」は積み重なる
経験的にも分かることであるが、後悔は積み重なり、後悔を避けるためにその後の選択に影響が出る。
今回紹介した実験でも、健常者においてゲーム回数が増えるにつれて、被験者の選択に対する「後悔」の影響は大きくなる。
そして、後悔する選択を回避する行動をとるようになる(後悔回避という)。
実際にfMRIを用いて脳の活動を計測しても、
「後悔」を経験した回数に応じて、後悔に関与する脳部位の活動が上昇することが明らかになっている。
また、それと同時に行動選択に関与する脳部位も活性化するため、私たちが経験的に知っている「後悔は蓄積する」と「一回後悔したことをやりたがらない」というのは脳の活動と矛盾しない。
後悔回避のインパクト
ヒトは基本的に同じことをする場合、たいていの場合は同じ方法を用いる。
日常生活に置き換えて考えると、同じ場所に行くときに、わざわざ毎回行き方を変える人はあまりいないだろうし、だれしも、自分の定番の○○(ある店に行ったら、決まって○○を頼むなど)というものが存在すると思う。
しかし、後悔というものはこのヒトの行動様式を覆すものである。
何故なら、同じ行動を繰り返すことを本能とするにも関わらず、その本能に反した選択をさせるからである。
自信があれば後悔しないの理屈
過去の知見から、ネガティブな選択をしたときにやむを得ない正当な理由があれば、理由がない時に比べて後悔の大きさが小さくなることが明らかになっている。
自信がある人というのは、自分の選択に頑強な理由を持っており、自信がない人は自分の選択に頑強な理由がない(理由があったとしても、揺らぎが大きいため、外部からの情報で簡単に覆されてしまう)。
もちろん、自信のある人の選択の根拠が客観的に見て正当であるとは限らないが、その人の中では正当なのである。もちろんこれが必ずしもいいとは言い切れない。
ただ、後悔を感じにくいという点においては精神衛生上いいのではないかと思う。
後悔の対処法
このようなケースを想像して欲しい。
行動してする後悔と行動しないことによる後悔のどちらが勝るかという研究は、研究毎に結果が異なるので、「行動しないでする後悔の方が大きい」とか言って勧誘してくる詐欺師は正確なことは言えていない。
また、このグラフのように、後悔の経時的変化も内容によって異なるので、後悔しない方法のテンプレなんてのは存在しないと思う。
唯一存在する対処法が、先ほど述べた、自分の選択に正当な理由を付けて、後悔はするけれども、その後悔を最小限に抑えることではないかと思う。
後悔をして、自己否定に入る人は、自分の選択に否定的な理由付けをしてしまうため、後悔と後悔以外のマイナスの感情を多く感じてしまうのかなと思ったり。
自分に全部言い聞かせて明日も生きます。
参考
Regret and Its Avoidance: A Neuroimaging Study of Choice Behavior
Nat Neurosci. 2005 Sep;8(9)
The Involvement of the Orbitofrontal Cortex in the Experience of Regret
Science. 2004 May 21;304(5674)
自信があれば後悔しない—意思決定への自信が後悔に与える影響—
後悔の時間的変化と対処方法-意思決定スタイルと行動選択との関連性