どうも、理系です。
今回は、皆さんが肌で感じているであろう、
「マスクをすると暑くてたまらん」
ってやつです。
また、テレビでも、
「マスクにより熱がこもり、熱中症リスクが例年以上に高くなっている」
と言われているが、実際の数値ベースのデータは出されない。
そこで、知的好奇心を爆発させて調べてみた。
参照ページ
https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/heat-illness/
この知見では、マスクをした場合の口周りの温度変化をサーモグラフィーを用いて測定している。
その結果、マスク着用なしの状態では口の温度は36℃程度だが、マスク着用により、39-40℃程度まで上昇した。
このサイトでは、口の温度のことしか考察していないが、マスクに覆われているのは口だけではない。
鼻もマスクに覆われている。
さらに、鼻は脳のすぐ下にあるため、鼻の中の温度上昇はダイレクトに脳の温度上昇につながる。
そのため、3℃以上も温度が上がるのであれば、確かにマスクは熱中症のリスクを上げるかもしれない。
ただ、この知見は1人のデータのため、若干恣意的な匂いがどうしてもしてしまう。
そこで、査読付き論文も調べてみた。
Absence of consequential changes in physiological, thermal and subjective responses from wearing a surgical mask
Respir Physiol Neurobiol. 2012 Apr 15;181(1):29-35.
この論文では、サージカルマスクを着用した被験者に軽度のトレッドミル運動をさせ、「マスクに覆われた部分の皮膚表面の温度」「マスクに覆われていない部分の皮膚表面温度」「深部体温」等を測定している。
※本当は他にも心拍等の他のパラメーターも測定しているが、今回は直観的に分かりやすい温度のパラメーターのみを取り上げる。
結果
・「マスクに覆われた部分の皮膚表面の温度」は1.76℃上昇する。
・「マスクに覆われていない部分の皮膚表面の温度」は0.4℃下がる。(P=0.03)
・マスク着用により、「深部体温」に有意な上昇は見られなかった(<0.1℃)
・被験者の体感の暑さを比較すると、マスク着用により、体感の暑さはほとんど変わらないorやや暑いという結果になった。
本論文では、軽度の運動では、マスク着用は深部体温にほとんど影響がないことが示されているが、負荷を増やせば、この検討では有意ではなかった差が有意になる可能性は十分にある。
この研究から、マスクを熱中症リスクとしてあたかもメインの要因として取り上げるよりも、酷暑対策と適切な水分補給という、例年通りの熱中症対策をメインに取り上げるべきである。
なぜなら、マスクの有無にかかわらず、熱中症患者がこれだけ出ているからである。
更に、今年は梅雨明けが遅かったため、まだ夏本番の暑さに我々の体が慣れておらず、例年の梅雨明け時期くらいの患者数のピークを迎える時期じゃないのかと思っている。