どうも、理系です。
重大事件や事故が起きたときに、犯人が知的障害者だと、責任能力がないと見なされ、無罪になるケースがある。
ネットでは、これをキチガイ無罪と言って揶揄している。
法律では、どうやら、正常な判断ができない病気のせいと判断し、本人のせいにはならんと判断しているらしい。
じゃあ、脳科学的側面から見るとどうなのか。
知的障害が、果たして人を攻撃するような脳機構を働かせているのだろうか?
野々村議員の号泣で有名になったアスペルガーやADHDという発達障害。
特にADHDは衝動性の亢進による多動(動き続ける・落ち着きがない・じっとできない等)が見られる。
この衝動性というワードを攻撃性はしばしばイコールあるいは強くリンクしているイメージを持たれる。「衝動的な人」と聞くと「乱暴そうな人」をイメージするのはまさにこれである。
しかし、脳科学的側面から見ると、衝動性と攻撃性は関与する神経機構が全く別物なのである。
ADHDの患者では、ドパミン神経系の異常が見られる。
これと衝動性を結びつけた研究がある。
サルに目線を数回動かした後、ある一点で目線を止めるという試行をすると、目線を止めているときに、黒質のドパミン神経系の活性化が見られた。
この知見は、ADHD患者におけるドパミン枯渇と衝動性をリンクさせていると言える。
攻撃性については以下のような知見がある。
雄マウスにおいて、背側縫線核という脳部位を興奮させる神経入力が増えると攻撃性が上がることが分かっている。
また、過剰な攻撃行動(ヒトでいう所のキレる)をしているときはセロトニン濃度が上昇することが分かっている(ヒトでいう所の口頭で注意するレベルの弱い攻撃行動ではセロトニン濃度に影響はない)。
ここまで読んでいただいて分かったように、衝動性と攻撃性というのは、関与する脳部位も脳内伝達物質も異なる全くの別物なのである。
つまり、衝動的だから人を殺すではなく、過剰に攻撃的な神経回路が活性化しているから人を殺すのである。
そして、過剰に攻撃的になる神経回路は、発達障害の病態には含まれていない。
極端な話、ただ単にその人が攻撃的で、脳の障害の有無なんて関係ないのである。
だから、障害者だから攻撃的と思わないで欲しい。もちろん攻撃的になってしまう人もいるがそれは障害のせいではない。
自分で抑え込めないのは障害のせいかもしれないけれど、根本的な攻撃欲求は障害じゃなくて、その人の本質。
そう考えると、キチガイ無罪は何でもかんでも障害のせいにしている印象で、病態を反映した科学的な妥当性に欠けると思う。
そして、この何でもかんでも障害のせいにする考えがあるから、何もしていない障害者が不当な偏見を受けるのではないかと私は思う。
※あくまで個人の意見です。