理系だもの

コミュ障理系会社員兼バレエダンサーの日記。健康食品のガチすぎるレビューから、ニュースについての自分なりの意見を書いたりしています。ためになる記事も多分ある。理系だもの。好きなこと:バレエ・ダンス鑑賞・音楽を聴くこと(推しは奏音69さん)、嫌いなこと・人:フェミニスト・媚びること・ストレッチ

真っ赤な嘘と統計学 -名古屋 studyから読み解くメディアのワクチン疑似相関論-

今年もインフルエンザワクチンの季節がやってきた。
今年は、新型コロナウイルス感染症の影響により、ワクチンというものに対する関心が高まっていると思う。
こういう話をすると必ずワクチンは危険だから接種してはならないとか、ワクチンは効果ない上に危険だが、政府が金儲けのためにそれを隠しているとかいう都市伝説テラーと呼ばれる人が登場する。

彼らはどうやら、弱毒化したウイルスによって免疫を獲得するくらいなら有毒なウイルスによって免疫を獲得したいようだ。
そして彼らは感情論だけではなく、それっぽい数字データを出して来たりする。その数字データだけを見ると彼らの主張というのは一見的を射ているように見える。
しかし、それと科学的に適切かどうかはまた別の話。

疑似相関というワードを聞いたことがあるだろうか?
凶悪犯罪者の95%がパンを食べたことがあるからパンを食べることと凶悪犯罪には相関がある。もっと極端に言うと、パンを食べると凶悪犯罪者になる。
というのが疑似相関の最も有名な例だと思う。数字をつかって嘘をつき、全く見当違いなものにあたかも因果関係があるように見せる。
ワクチンの場合は、ワクチンと関係なく起こる事象をあたかもワクチンが理由のように見せかける。
具体的には、あえてワクチン非接種の場合の症状発現頻度を無視してワクチン接種の場合の症状発現頻度のみをドヤ顔で見せて「ワクチンを打つとこんなことになります。薬害です!」と主張し、不安を煽るといった手法である。

こんなフェイクニュースを暴いたのが名古屋スタディーである。

名古屋スタディーは2015年に名古屋で行われたHPVワクチン接種に関するアンケート調査である。サンプルサイズは万というなかなかに信頼性の高い調査報告である。

http://www.med.nagoya-cu.ac.jp/kouei.dir/ns_Nagoya%20Stduy_Papillomavirus%20Research2018.pdf

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この調査は当日問題になっていたHPVワクチン(子宮頸がんワクチン)の副作用被害者の会からの要請で実施された。この頃、メディアではHPVワクチンの副作用ニュースがひっきりなしに報道され、最初は推奨されていたHPVワクチンは推奨されなくなり、接種率は先進国では最下位レベルまで下がってしまっていた。

だから、誰もがメディアでしばしば取り上げられている副作用とHPVワクチンには強い関連があると予測していた。

結果は、全て相関なし。薬害ではないという結論に至った。
(この研究結果がなぜか、メディアでは取り上げられないんだよなぁ…
そして、更に闇深いのが、解析結果を名古屋市は最初は公開していたのだが、すぐに解析結果が削除され、アンケート結果のみ公開に切り替えられた。理由については名古屋市はだんまりである。市として、HPVワクチンと副作用に関係ないと発表することについて何かしらの圧力がかかったらしい。
なので、この記事はこの解析を実施した大学の先生が出した論文を参考に書いている。)


HPVワクチンを接種したことで起こると言われていた下記の24症状について、HPVワクチン接種した人(自然発症率+HPVワクチン以外の原因による発症率+HPVワクチンによる発症率)としていない人(自然発症率+HPVワクチン以外の原因による発症率)の発症率を比較してオッズ比とその95%信頼区間を求めている。
*オッズ比が1の時、HPVワクチン接種の有無にかかわらずその症状が出る危険性が同じ、オッズ比が1よりも小さい場合HPVワクチンを接種しない方がその症状が出る危険性が高い、オッズ比が1よりも大きい場合はHPVワクチンを接種した方がその症状が出る危険性が高い。(サリドマイド事件ではオッズ比は380になった)
*95%信頼区間とは、オッズ比が95%の確率でこの値の範囲に入るということを示している。オッズ比の95%信頼区間の最大値が1よりも小さい場合HPVワクチンを接種しない方がその症状が出る危険性が高い、オッズ比の95%信頼区間の最小値が1よりも大きい場合はHPVワクチンを接種した方がその症状が出る危険性が高い。

調査した24症状
・月経不順
・経血量異常
・関節や体の痛み
・深刻な頭痛
・体がだるい
・疲れやすい
・集中できない
・視野の異常
・光を異常にまぶしく感じる
・視力低下
・めまい
・足の冷え
・入眠困難
・過眠
・皮膚症状
・過呼吸
・ものが覚えられない
・漢字等が思い出せない
・簡単な計算ができない
・不随意運動
・歩行困難
・車いすや杖が必要になった
・突然力が抜ける
・手足に力が入らない

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HPVワクチン非接種or接種した人の各症状の発症率一覧
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各症状における発症のオッズ比、病院を受診した人のオッズ比、各症状の持続リスクのオッズ比

一部1を超えるオッズ比が見られるが、その他の薬害のオッズ比が3桁以上であることを踏まえるとはるかに小さいため、薬害と言えるレベルにない。

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HPVワクチン接種時期と各症状のオッズ比

もし、HPVワクチンの副作用があるのであれば、接種時期に関わらず、一貫してある一つの症状のオッズ比が高くなるはずである。しかし、本解析結果ではオッズ比が高い症状は接種時期によって異なり、一貫性がない。しかも、薬害と言えるようなオッズ比でない。

つまり、本研究においてはHPVワクチンと副作用に統計学的因果関係がないということが明らかになった。

HPVワクチンの副作用騒動は知っていても、この研究を知っている人ってほとんどいないのが本当に惜しい。

また、統計はあくまで推計なので、副作用が絶対起きないというわけではないことは了解していただきたい。

しかし、ワクチンは承認されるまでに厳しい試験を受けて、効果と安全性を検証されている。都市伝説テラーの統計の嘘と科学的に適正な試験を受け、適正な統計データに基づいたワクチン、どっちを信じるかはあなた次第です。

医薬品やワクチンがどのように開発されているか、こちらの本を読んでいただけると今回の記事がより深く理解できるかと思います。

ついでに、似非医療を爽快なまでに科学的に否定してくれているので、健康詐欺に騙されない考え方を身につけられると思います。

医療系学生の皆さんにはぜひとも読んでいただきたいです。