どうも、理系です。
新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、抗菌・除菌ブームが起こり、あらゆるところで抗菌・抗ウイルス加工の文字を見るようになった。
電車の中はもちろん、神社のおみくじに至るまであらゆるものに抗菌・抗ウイルス加工済のステッカーが貼られていたりするが、誰もが以下のような疑問を持ったと思う。
「果たしてこの抗菌・抗ウイルス加工に効果はあるのだろうか?」
「どのような仕組みで抗菌・抗ウイルス効果を発揮するのか?」
今回はこの二つの疑問について、文献を参考に解説していく。
抗菌・抗ウイルスの仕組み
抗菌加工には、主に二種類が存在する。
製品に抗菌効果のある素材を用いる方法、製品の表面を抗菌効果のある薬剤でコーティングする方法の二つがある。
電車などで用いられている抗菌・抗ウイルス加工は、後者の薬剤でコーティングする方法である。
で、この抗菌剤の成分の代表例として、以下のものがある。
・銀
銀は酸素が活性酸素に変わる反応の手助けをする作用があり、これによって発生した活性酸素が細菌やウイルスを殺す。それに加えて銀イオンにはタンパク質の変性作用があるため、この機序によっても細菌やウイルスを殺すことができる。
・チタン
チタンに光が当たると、活性酸素が発生し、その活性酸素が菌やウイルスを殺す。
なお、活性酸素で菌やウイルスを殺すという機序は、我々の体内で好中球が菌やウイルスを殺すときに用いている機序と同じなので、活性酸素を利用して抗菌作用を期待するというのは理にかなっている。
また、今回は紹介しなかったが、銅にも抗菌作用があることが知られている(大腸菌培地に銅片を置くとそこだけ大腸菌が生えなくなるという知見が存在する)。そう考えると10円玉には抗菌作用があるのか??
抗菌加工はどれくらい効果があるのか
本題に移る。
抗菌加工が抗菌作用を発揮する機序が分かったところで、実際に使われている製品がどれくらい抗菌効果を発揮しているかどうかが気になるという方は多いと思う。
いわゆる
※すべての菌がいなくなるわけではありません。
の程度がどれくらいなのかという話である。
今回、ウイルスを用いた知見を見つけることができなかったので、細菌を用いた知見を紹介する。
なお、この手の実験に詳しくない方もこの記事を見ることを考えて、原著よりもかなりかみ砕いた表現を使っている。正確な内容が知りたい方は原著を参照して欲しい。
抗菌タイルおよび抗菌陶器の抗菌効果
片岡 陳正, 宇賀 昭二, 青木 皐
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsei1986/13/3/13_3_205/_pdf/-char/ja
実験方法は簡単である。
評価対象の抗菌加工製品に細菌を塗り、時間経過毎にどれだけ菌が減少したかを検証する。なお、比較対象として、抗菌加工を施していない製品に菌を塗り、同様の検証を行う。
評価方法は、最初に塗った菌の数を5として、0(菌検出なし)~6(元の菌の数の10倍)のスコアによって行う。
結果を以下に示す。
※すべての菌がいなくなるわけではありません
の程度がこれである。(詳しい結果の解説は原著へ)
ここで、「いや、菌数0なってるやつあるやん」というツッコミが来ると思うが、時間の単位を見て欲しい。
数時間たってようやく菌数0になるor菌数が減り始める。
つまり、たとえ抗菌・抗ウイルス加工を施してあったとしても、一回飛沫で汚染されると、数時間くらいはその飛沫に含まれる菌やウイルスが生きた状態で残っている可能性が高いということである。
全ての抗菌加工がこうであるとは言えないが、正直、ある人が触った手すりやボタンを、数時間後まで誰も触らないというのは、最も感染拡大策が必要な都会では不可能な話である。
一番いいのは、不必要に不特定多数の人が触るものに触れないこと。もしくは、触る前にその場所を消毒をすること、触った後に手を洗うことである。(適切な消毒薬であれば分単位で生菌数が0まで減少する)